【がん情報のさがし方】健康情報を評価するフローチャート
♪探しものは何ですか?見つけにくいものですか?
以前に,どこかで,健康情報を評価するフローチャートを見かけた。
紹介しようとして,いざ,さがしてみると,見つからない。
その後,偶然,再会した。
健康食品を安易に使うことは勧められない:代替医療:がんサポート情報センター
「健康情報を評価するフローチャート」でググって,坪野吉孝先生自身の記述を見つけた。
健康情報を評価するフローチャート
こちらのほうが,解説がくわしい。
副作用の少ないからだにやさしい治療法を見つけたら,このフローチャートに沿って,その情報を評価されることをお勧めする。
さすれば,ダークサイドに堕ちることもないだろう。
わらをつかもうとするから,わらをつかませられる。
「健康情報を評価するフローチャート」
下の文章は、「How to 健康管理」2001年10月号(株式会社法研)に掲載された同名の連載コラムを、編集部の了解を得て転載したものです。
「この栄養素が、がん予防に効く」
「あの食品で、がんに克つ」こうした類の情報が、大量に私たちの目に飛び込んできます。けれども、その信頼性はさまざまです。
健康情報の信頼性を評価する際に、私自身がふだん無意識に行っている思考プロセスを、フローチャートにしてみました。
健康情報の信頼性を評価するためのフローチャート
ステップ1 具体的な研究にもとづいているか
はい↓ いいえ → それ以上考慮しない(終わり)
ステップ2 研究対象はヒトか
ヒト
↓ 動物実験や培養細胞 → 「有害作用」についての研究は、それなりの注意を払う。「利益」についての研究は、人間にあてはまるとは限らないので、話半分に聞いておく(終わり)
ステップ3 学会発表か、論文報告か
論文報告↓ 学会発表 → 科学的評価の対象として不十分なので、話半分に聞いておく(終わり)
ステップ4 研究デザインは「無作為割付臨床試験」や「前向きコホート研究」か
はい↓ いいえ → 重視しない(終わり)
ステップ5 複数の研究で支持されているか
はい↓ いいえ → 判断を留保して、他の研究を待つ(終わり)
結果をとりあえず受けいれる。ただし、将来結果がくつがえる可能性を頭に入れておく。「ステップ1」の「具体的な研究」に基づいていない情報として、おもに念頭においているのは、「健康食品や栄養補給剤を食べたら、患者さんの何人かで効果があった」という「体験談」です。
こうした体験談は、何人食べたら何人で効果があったかという、「分母」と「分子」の関係が、しばしば不明確です。また、「食べたら効果があった」といっても、実際には次のどれにあてはまるのか、きちんと区別できない場合が少なくありません。
① 健康食品等に、ほんとうに効果があった。
② 健康食品等に効果はなく、実際はほかの治療などに効果があったのだが、それが健康食品等を食べていた時期とたまたま重なった。
③ 健康食品等じたいに効果はなかったが、「効く」と信じて食べたので、その精神的な安心感がよい方向に影響した。そのため、「体験談」だけに基づく健康情報を、そのまま鵜呑みにすることはありません。
「ステップ3」の「学会発表と論文報告」について、健康食品等の広告を見ていると、どこかの学会で発表されたデータを引合いに出して、効果を謳っているのを見かけることがあります。
「専門家の集まる学会で発表して認められた研究なのだから、きっと真実に違いない。」そう考える向きもあるでしょう。
けれども、研究の価値は、信頼性や重要性についての審査を経て、専門誌に論文として報告されてはじめて定まるもので、学会発表だけでは判断しないのが普通です。
ですから、健康食品等の広告に、学会発表の成績が引用されている場合には、「きちんとした論文報告がされておらず、学会発表どまりのデータしかない」のだと、逆に割り引いて考えるようにしています。
「ステップ5」の「複数の研究」について、ふつうの食事を通して摂取する食品や栄養素の場合なら、おおむね7-8件以上の前向きコホート研究で一致する結果が示されていなければ、その結果を受け入れることはありません。食事からの摂取量を越える栄養補給剤等の場合なら、おおむね3件以上の無作為割付臨床試験で一致する結果が示されていなければ、その結果を受け入れることはありません。
「なんと慎重な(疑り深い)。」
筆者の思考プロセスについて、そう感じられるかも知れません。けれども、栄養疫学を専門にする研究者は、だいたい似たような基準で、健康情報の信頼性を判断しているのではないかと思います。
最近のコメント